平成27年予算概算要求の財務省への提出が8月29日、締め切られました。
主な項目について、概算要求のポイントをご紹介します。
以下、機関紙「自由民主」9月9日号より出典。
新しい日本へ予算を重点化
自由民主党は政務調査会に設置されている部会や調査会、特別委員会などの機関で各省庁から要求する予算について説明を聴取、議論した後、最終的に28日の政調審議会で報告を受けた。一般会計の要求総額は約101兆円。26年度予算に続いて、民需主導の経済政調と財政健全化目標の双方の達成を目指し、メリハリをつけたのが特徴。成長分野の地方創生などを対象に上乗せ請求できる約4兆円の「新しい日本のための優先課題推進枠」を設けるなど、無駄を排除しながら政策の優先順位を重視し、予算の中身を重点化している。これから財務省は要求内容を絞り込む作業に入るが、わが党(自由民主党)は引き続き、山積みする内外の課題に迅速に対応できるよう、年末の予算編成に臨む。主な項目は以下の通り。
ローカル・アベノミクスで地域経済再生
経済産業
経済産業省は一般会計と特別会計を合わせて、平成26年度の当初予算比で12.2%増の1兆7278億円を要求する。6月に閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2014」の確実な実行が目的。
経済政策の効果を全国に波及させる「ローカル・アベノミクス」の推進が柱。地域の中核企業による産業集積の構築に225億円、ベンチャー企業や第二創業の促進に77億円、地域資源を活用したブランド化に95億円など、このための予算として557億円を盛り込んだ。関連予算を大幅に増額し、高齢化と人口減少が進む中、政権の最重要課題である経済の再生と地域の活性化に全力を挙げる。
また、イノベーション(技術革新)が生まれやすい環境を整備するため、研究機関の機能強化や重点分野への支援などにも取り組む。これまで、先進的な技術シリーズ(種)が新たなビジネスや製品の開発に十分につながっていない反省から、その事業化までをつなぐ「橋渡し」機能を抜本的に強化するため、新規で19億円を求める。
エネルギー政策では、東日本大震災以降の最初の計画として4月に閣議決定した第4次エネルギー基本計画の実現に重点化した。再生可能エネルギーの導入促進に1586億円、災害発生時を想定したサービスステーションの強化に341億円、次世代のエコカーとされる燃料電池車の導入に401億円などを要求。震災後のエネルギーコストの上昇や資源の供給不安などの課題克服を目指す。
女性・若者の活躍を推進
厚生労働
厚生労働省の一般会計の要求額は今年度当初予算に比べ3%増の31兆6688億円。このうち、年金や医療に関する経費は29兆8558億円となり、今年度を8155億円上回る。
具体的には、持続可能で安心できる年金制度の運営に10兆9532億円を要求。恒久化された基礎年金国庫負担割合2分の1を確保するなど、公的年金制度を老後の安定した生活を支えるセーフティネットとして確立する。
医療分野については、研究開発の促進に今年度比90億円増の566億円を求める。国民の健康寿命の延伸はもとより、医療関連産業の国際競争力を向上させるため、基礎から実用化までを一貫して推進し、世界最高水準で革新的な医療技術の提供を急ぐ。
「新しい日本のための優先課題推進枠」では、女性・若者等の活躍推進と健康長寿社会実現の2点を中心に2443億円を盛り込んだ。中でも、「地域しごと創生プラン(仮称)」では、331億円を要求。各地域がそれぞれの特性を生かし、良質で安定した雇用機会を自発的に創出するための取り組みを後押しする。
また、社会問題化している危険ドラッグの販売店に対する取り締まりの強化も盛った。今年度は1億2000万円だった関連予算を11億円まで増額。成分の分析を行う「国立医薬品食品衛生研究所」の増員により年間の検査件数を現在の10倍にまで増やし、事故の再発を防ぐ。
「農地中間管理機構」など大幅増額
農林水産
農林水産省の予算総額は、同前年度当初予算額の2兆3267億円を大幅に上回る2兆6541億円を計上、対前年度比114.1%の伸びとなる。重点項目では、担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進で、「農地中間管理機構の本格稼働」に576億円と大幅増額。加えて代表的な担い手対策である就農前後の青年就農者・経営継承者への給付など「新規就農・経営承継総合支援事業」は、前年度比プラス67億円の285億円とした。
一方、強い農林水産業のための基盤づくりとして、老朽化した農業水利施設の長寿命化・耐震化対策や農地集積の加速化、農地の大区画化・汎用化等を推進する「農業農村整備事業」に3371億円、国産材の安定供給に加えて地球温暖化防止のための森林間伐採等や道路を整備する「森林整備事業」に1501億円、老朽化した漁港施設の長寿命化・耐震化対策等の「水産基盤整備事業」に859億円と、昨年に引き続き農林水産業の基盤整備に重点を置いた。
また、地方の裁量によって実施する農山漁村の防災・減災対策や農林水産業の基盤整備を支援する「農山漁村地域整備交付金」として1335億円を盛り込んだ。
一方、経営環境の悪化に対しても所要の措置が示されている。
燃油価格高騰時のコスト対策など「漁業経営安定対策」として前年比大幅増の454億円を計上、また「畜産・酪農経営安定対策」として、配合飼料価格高騰時の対応も含め、生産者が経営の継続・発展に取り組むため、1831億円を充てている。
「地域の元気」目指し重点
総務
総務省の概算要求額は16兆9105億円(今年度当初予算比22億円減)となった。このうち、国から地方に配る地方交付税の一般会計からの繰入額は地方特例交付金を合わせて16兆972億円(同453億円減)、一般歳出は8133億円(同430億円増)を計上した。
一般歳出の大部分を占めてきた恩給費が引き続き受給者減少による影響を受けて今年度より517億円少ない規模(370億円)となる一方、政策的経費はこれを上回る3998億円(同512億円増)となった。このほかに、新しい日本のための優先課題推進枠453億円を計上している。
具体的には、「地域の元気創造プラン」による地域からの成長戦略のため、地域密着型企業の立ち上げなどに47億円強。過疎集落活性化のための集落ネットワーク圏の形成に10億円(新規)。また、2020年東京五輪・パラリンピック東京大会を見据えて、世界最先端の情報通信技術(ICT)環境の実現のために56億円5000万円(新規)。同じく新規分として、女性の活躍を支援するためテレワーク環境の裾野拡大に向けて19億5000万円を計上した。
安全・安心・・・環境対策・・・2020年に向け
防災・減災対策に手厚く
国土交通
国土交通省の一般会計予算の要求総額は今年度当初予算比16%増の6兆6870億円となった。同省は重点項目として(1)東日本大震災からの復興加速(2)地方の創生、人口減少の克服(3)国民の安全・安心の確保(4)成長戦略の具体化―の4項目を掲げ、各事業・施策分野については「限られた予算で最大限の効果の発現を図る」とした。
「地方の創生、人口減少の克服」では、郊外に広がった都市機能を中心部に集める「コンパクトシティ」の推進に153億円を計上したほか、整備新幹線の国費分の建設費720億円などを要求した。
「国民の安全・安心の確保」では、老朽化対策などに取り組む自治体を支援する「防災・安全交付金」に1兆2647億円を確保。南海トラフき巨大地震や首都直下地震対策などの推進に2441億円を盛り込んだ。また、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域における中国公船への対応に万全を期すため、大型巡視船の増強や要因の確保などに504億円を計上した。
「成長戦略の具体化」では、首都圏空港などの機能強化に163億円、訪日プロモーション強化に147億円を盛り込んだ。
学校を中心とした地域力強化を
文部科学
文部科学省の一般会計の要求額は対前年比10.1%増の5兆9031億円。きめ細かな指導体制の整備や学校を中心とした地域活性化策などに重点を置いた。
教職員定数改善では、少人数の課題解決型授業や小中一貫教育の充実などを図るため、10年後の学校の姿を見据えた新たな定数改善計画案の策定を目指す。来年度分の増員は2760人となり、専門人材などの配置で教員の負担軽減を図る。義務教育費国庫負担金は1兆5258億円。学校を中心とした地域活性化策には新規で84億円を計上。3000カ所に「学校支援地域本部」を儲け、住民にも学校の教育活動に参加してもらう。
また、「いじめ対策等総合推進事業」に計66億円を計上し、全国の公立校に配置するスクールソーシャルワーカーを現在の3倍約4200人に拡充する。
さらに、低所得世帯に対する経済的支援を図るため、「大学等奨学金事業の充実」に871億円を要求。大学生などへの奨学金の無利子枠を3万人増やす。
スポーツ関連では、東京五輪・パラリンピックの開催に向け、前年度の2倍以上となる531億円を計上。強化事業費を倍費の178億円としたほか、ナショナルトレーニングセンターの拡充整備に新規で1億円を要求した。
また、研究開発法人を中核とした科学技術イノベーションに適した環境づくりに50億円、地域の産業未来ビジョン実現に向けた「地方創生イニシアティブ」に70億円を計上した。
(出典 機関紙「自由民主」9月9日号)