平成28年3月10日(木)に開催された、産業常任委員会(平成28年2月定例県議会 )にて以下の内容で質問を行いました。

1.お茶の生産振興について
2.県育成の中晩柑「佐賀果試35号」について
3.農林水産物や加工食品の輸出拡大について
4.集落営農法人育成加速化対策事業について
5.オスプレイ配備等による漁業への影響について
6.九州オルレについて

うち、質問内容の一部を抜粋してご報告させていただきます。

4.集落営農法人育成加速化対策事業について

先祖伝来守ってきた農地、地域によっては、今後、維持・活用していくことが難しくなるのではないかと大変心配しておりますし、そういう状況を迎えているのではないかと思います。

そうした中、県では今議会に集落営農法人育成加速化対策事業を提案されましたので、その件について質問しました。

※以下、質問と答弁の内容(読みやすいように一部省略しています。)

(質問)集落営農の育成過程についてではありますが、集落営農組織化は、いつごろから始まり、現在どのくらい組織化されているのでしょうか。

(池田農産課長)本県では、平成16年度から実施された国の水田農業構造改革対策に対応するために策定いたしました佐賀県水田農業の基本方向において、水田農業のあるべき姿として個別大規模農家と集落型経営体が水田の相当部分を担う体質の高い農業構造を実現することを目指して、別大規模農家と集落型経営体の育成を図っていくこととしていたところです。

そうした中で、平成18年に創設された国の品目横断的経営安定対策の実施を契機として、県内の平坦地域を中心に集落営農の組織化が進み、集落営農の組織数は、平成27年3月末時点で491組織となっております。

(質問)集落営農組織の課題があると思います。この任意組織である集落営農にはどのような課題があるのでしょうか。

(池田農産課長)集落営農組織の多くは、設立後、9年程度が経過しており、構成員や役員の高齢化が進み、これまで通りの組織の維持が難しくなってきております。また、法人格を持たない任意組織では、農地の受け手となることができず、加えて、投資財源や人材の確保などの面で経営力が脆弱でありまして、集落営農が永続的に経営発展を図っていくには限界があります。

さらに、品目横断的経営安定対策の後を継いで平成25年度から実施されております経営所得安定対策では、法人化に取り組むことが要件となっております。こうしたことから、任意組織の集落営農組織を法人化することが喫緊の課題となっています。

(質問)私の地元の嬉野市では、特に塩田では、集落営農組織において、昨年法人化に幾つか取り組まれました。県内でもここ数年法人化が進んでいると思っていますが、県内の集落営農の法人化数はどのようになっていますか。

(池田農産課長)本県では、平成18年度に品目横断的経営安定対策への加入に合わせて8つの集落営農法人が設立されております。また、任意組織でありました主らく営農組織が法人化したケースとして、平成25年度に神埼市の農事組合法人小鹿ファームが本県で初めて誕生したのに続き、平成26年度には7つの法人が設立しております。さらに平成27年度には、2月末までに38法人が設立されておりまして、累計で54法人となるなど、ここ2、3年で平坦地域を中心にした法人化への取り組むが進み始めているところでございます。

(質問)法人という形は、大規模から小さいところまであると思いますが、大規模のところはどういう法人があって、どれくらいの規模なのでしょうか。

(池田農産課長)まず、九州の事例で申し上げると、熊本県熊本市の南に位置する嘉島町というところがございますが、嘉島町全域を対象とした「農事組合法人かしま広域農場」が平成27年11月に設立されております。その法人は、経営面積が478ヘクタール、構成員が388名と九州最大規模の法人でございます。これは、これまで既存の集落営農法人が再編統合された広域の組織ということでございます。

そして、本県の例で申し上げると、佐賀県川副町では経営面積が320ヘクタールの「農事組合法人西川副」というのができております。また、諸富町では、経営面積310ヘクタールの「農事組合法人もろどみ」が設立されておりまして、本県でも広域的な法人が出来つつあります。

(質問)この事業の目的、目標はどのようになっているかお伺いします。

(池田農産課長)本事業については、法人化後の経営安定に向けた支援を行うことにより、野菜の契約栽培を取り入れた経営の複合化や担い手間の交換分合による農業機械の一層の効率利用など、経営発展にチャレンジできるような集落営農法人の育成を加速的に推進することを目的としています。

また、平成32年度までに全集落営農組織491組織のうち、約7割に当たる344組織を法人化することを目標としています。

(質問)次に、その事業の内容はどのようになっていますか。

(池田農産課長)本事業は平成28年度から平成32年度までの5年間にわたり、二種類の事業を行うこととしています。

まず、一つ目の集落営農組織法人化推進事業では、集落営農法人の設立初期に要する経費に対して、補助率二分の一以内で一法人当たり70万円を上限に補助することとしております。また、法人化とあわせて農地中間管理機構を通じ、地域内で農地をほかの担い手と交換して集団化、いわゆる交換分合に取り組む場合は、平成28年度から平成20年度までの3年間に限って補助率を三分の二以内に、また、一法人当たりの補助上限額を100万円にそれぞれかさ上げすることとしています。

次に二つ目の集落営農組織支援センター整備事業では、農協の基幹支所をエリアとし、法人運営や経理事務の相談の対応や、集落営農組織の法人化に向けた助言や設立に対する支援などを行う集落営農組織支援センターの設置を推進することとして、その整備、運営に要する経費に対し補助率二分の一以内で、一センター当たり300万円を上限に2年間継続して補助することとしております。

(質問)事業の補助対象の経費、これは集落営農法法人の設立初期に必要な経費となっていますが、具体的にはどのようになっていますか。

(池田農産課長)集落営農組織法人化推進事業の補助対象経費については、集落営農法人の設立初期に必要な、例えば事務用品の購入費、税理士など専門家への相談に係る経費、新規作物の試作や新技術の実証に係る経費、さらには、共同利用機会の購入費や点検費など、補助対象となる範囲を広くして、できるだけ集落営農法人が取り組みやすくなるようにしていきたいと考えています。

(質問)そうすると、市町や事業者の事務を簡素化して取り組みやすくしてもらったほうが良いと考えておりますが、その辺りはいかがですか。

(池田農産課長)事業実施計画書や実績報告書の様式をできるだけ簡素化するとともに、事業実施主体が計画書を作成しやすいように、例えば、記入例を示すなどして事務負担の軽減に努めたいと考えております。

(質問)できるだけ事務負担の軽減に努めるということですが、かつて、農地・水で事務の手続きが煩雑で、それでおやめになったところも随分とありました。制度そのものは非常に良い制度なんですね。ぜひ、事務の簡素化をできるだけしていただき、そして、使い勝手の良いものに仕上げていただきたいと思います。

高齢化や担い手の問題は避けられないわけですから、地域農業の発展、農地の維持・活用をしていくためには、法人化をさらに進めていく必要があるようになると思います。今後、どのように進められるのかお伺いします。

(池田農産課長)これまで県では集落営農組織に対して、地域の実績に応じた法人化を呼び掛けてきました。
具体的には、法人化の準備を進める組織に対し、市長、農協、農業改良普及センター等の関係機関・団体が連携して、法人設立のための事業計画書の作成や財産の管理方法などの助言を行うとともに、農協が開発した経理システムを利用した法人会計処理などの事務処理の負担軽減や、税理士の派遣による法人設立時の経理処理や法人化後の安定した経営に向けたアドバイスを行ってきました。

今後はこうした取り組みに加え、今議会で提案している集落営農法人育成加速化対策事業により、設立初期の経営安定や経営発展に向けた新たな取り組みなどに支援を行うこととしています。今後とも、集落営農組織の法人化は、本県の水田農業の維持・発展を図る上で重要な課題であることから、市町やJAなどの関係機関・団体と十分に連携して積極的に推進したいと考えております。