平成26年6月26日(木)に開催された文教厚生常任委員会にて健康福祉本部と教育委員会へ質問を行いました。

以下、健康福祉本部への質疑と答弁のやりとりを、一部を抜粋してご報告いたします。
読みやすいようにまとめております。

介護保険制度の改正等について

(1)地域医療・介護総合確保推進法の概要について

(石井)団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据えて、持続可能な社会保障制度の確立を図るため、効率的かつ質の高い医療提供体制と地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域のおける医療及び介護の総合的な確保を目指す「地域医療・介護総合確保推進法」、この法律が6月18日の参議院本会議で可決成立しました。

この法律は、「医療・介護の連携強化のための新たな基金の創設」、「地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保」、「地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化」の3点が大きな柱となっています。特に介護に関しては、これまで一律負担であった介護保険利用者の自己負担を一定所得以上の方については2割に引き上げる等、介護保険制度の創設以来となる大幅な制度改正となっております。この法律は、介護関連について来年度から段階的に施行されることになっており、事業主体である市町や介護保険者は、今後、制度改正に伴う新たな業務や様々な課題への対応が必要になってくると思います。国や県の市町等に対する適切な支援が欠かせないと考えています。

また、本県の高齢者数がピークになる2025年に向けて拡大が見込まれる介護需要に応じて必要となる介護人材の確保が大きな課題となっており、給与等の処遇面で恵まれていないと言われる介護職員の処遇改善を早急に図る必要があると思っています。

まず、地域医療・介護総合確保推進法の概要についてお伺いします。

今回成立した地域医療・介護総合確保推進法には、介護に関してどのような内容が盛り込まれているのか。そして、それらはいつから施行されるのかをお伺いします。

【答弁】今回の法律について、介護に関しては、大きく2つの柱からなります。一つは、在宅医療、介護の推進等のために消費税の増税分を活用して都道府県に新たな基金を設置するというものがあります。もう一つは、地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化というものです。

地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化の主な内容としては、要支援者に対する訪問介護、通所介護を全国一律の介護保険の予防給付から市町村の地域支援事業に移行すること、また、特別養護老人ホームの新規入所者を原則要介護三以上に限定すること、それから、低所得者の保険料の軽減割合を従来の5割から7割に拡大すること。また、最後に一定以上の所得のある利用者の自己負担を1割から2割へ引き上げることなどが盛り込まれております。

法律の施行時期については、6月25日の交付と同時に施行されております。新たな基金の設置は、まず医療に関する事業の実施は今年度から適用されることになります。介護に関する基金の事業の実施については27年度からということになります。

また、特別養護老人ホームの要介護三以上への入所要件の見直しと低所得者の保険料の軽減割合の拡大については、平成27年4月からです。
最後に、見直し及び低所得者の保険料軽減割合の拡大については、平成27年8月1日になっています。(梅村長寿社会課長)

(2)介護保険利用者の自己負担の見直しについて

(石井)介護保険利用者の自己負担の見直しがあると思いますが、一定所得以上の人について、介護保険の利用者負担が1割から2割になるというお話でした。この所得の線引きはどのようになっていますか。

【答弁】今回の自己負担の見直しについては、保険料の上昇を出来るだけ抑え、現役世代の負担が重くなりすぎないよう、高齢者世代内での負担の公平化を図ることを目的としています。
介護保険利用者の利用負担が2割となる方については、65歳以上の被保険者のうち、所得で160万円以上、単身で年金収入のみの場合、280万円以上の年金収入ということになります。(梅村長寿社会課長)

(3)要支援者に対する介護予防サービスについて

(石井)要介護支援者に対する介護予防サービスは、市町村事業に移行後、どのように実施されるのかお伺いします。

【答弁】介護予防サービスの実施方法については、平成29年度までに全市町で実施することになります。要支援者への介護予防サービスの実施方法は、まず、市町村が今後それぞれの地域の実情に応じて決めていくことになりますが、例えば、従来どおり介護事業所の訪問介護や通所介護サービスなどの既存サービスを利用する、もしくは、新たに民間の事業者やボランティアなどが行う生活支援サービスを利用する方法など、様々な方法が考えられるのではないかと考えています。(梅村長寿社会課長)

(石井)この事業に必要な財源はどのようになっていますか。

【答弁】事業の財源については、実施主体は市町村に移りますが、今後行う地域支援事業についても、従来の介護予防給付と同じく介護保険制度の中の一つの事業です。財源構成については、国25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%、それから介護保険料が50%ということで、これまでの介護予防給付と同じ財源になっています。(梅村長寿社会課長)

(石井)今後、このサービスの質、あるいは量に地域格差が生じないように、どういう市町を県として支援していこうと考えておられるかお伺いします。

【答弁】国としても、市町村の地域支援事業の円滑な実施や充実のために、自治体や関係諸団体などの意見を十分に踏まえたガイドラインを策定するようにしています。そのガイドラインや実施方法など細かい助言も行うことにしています。
県としては、全国の先進自治体の取り組みを市町に紹介する研修会の開催や、国から示されるガイドラインの活用により、市町の地域支援事業が円滑に実施されるよう支援していきたいと考えています。(梅村長寿社会課長)

(石井)もう少し、市町との連携、連絡体制をしっかり持っていかないと、なかなか納得できるような、地域格差が生じない制度にならないと思いますが、その辺りはいかがでしょうか。

【答弁】新たな事業に取り組むことになりますので、県としてなるべく支援できるよう、平成29年4月までの2年間の移行期間に、やり方について今後検討したいと思います。(梅村長寿社会課長)

 特別擁護老人ホームについて

(4)特別擁護老人ホームについて

(石井)特別養護老人ホームの設置の状況について、全国、九州、佐賀県の設置状況について答弁をください。

【答弁】国の調査によると、平成24年10月1日現在で特別養護老人ホームの施設数と入所定数は、全国で6590ヵ所、定員でいくと、47万5695人、また九州では828ヶ所、54355人、佐賀県では56ヵ所、3453人となっています。65歳以上の高齢者人口1000人当たりの入所定員で見ると、全国が15.4床、九州と佐賀県が16.2床、佐賀県は全国順位としては高いほうから23位となっています。(梅村長寿社会課長)

(石井)県内における入所申込者数と現在の住居はどうなっていますでしょうか。

【答弁】入所申込者数と現在の住居については、昨年4月1日現在で県が行った調査によると、県内の特別養護老人ホームに入所申込をされている方は4550人となっています。
また、この方達の現在の住居等については、在宅が37.8%、入院中の方が23.3%、老人保健施設に入所されている方が14.6%、認知症のグループホーム等に入所されている方が6.9%となっています。
特養の入所申込者の中には、ひとりで複数の施設に申込みをされている方もいらっしゃいますので、実際に入所が必要な方はこの人数より少なくなるものと思います。(梅村長寿社会課長)

(石井)かなりの方がお待ちになられている印象を持ちます。
佐賀県では、これまで特養の新設は認めない方針とされてきましたが、今後、この特養の整備について佐賀県としてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

【答弁】本県の高齢者数は、2025年をピークに減少に転じることが見込まれております。そのことから、現在の第5期さがゴールドプラン、県のゴールドプランでは、特別養護老人ホームなど、施設・居住系のサービスについては新設を行わないとしています。
一方、緊急に施設入所が必要となる方については、平成26年度末までに、県内で最大76床のショートステイの床数を、特別養護老人ホームのベッド数に転換するということで対応を行う計画になっています。(梅村長寿社会課長)

(5)介護職員の確保について

(石井)2025年から減少に転じるという予測が立つから今のような話になると思いますが、2025年までは、ある意味、待っている方は我慢しないといけないのでしょうか。私としてはその辺りがどうかなという感じがします。

次に、介護職員の確保も非常に重要になります。介護をされる職員の給与等の待遇については、現在どのような状況でしょうか。

【回答】介護職員の給与等処遇の現状については、厚生労働省が行った平成25年の賃金構造基本統計調査によると、10人以上の規模の企業において、決まって支給する現金給与額について、全129職種のうち、ホームヘルパー(訪問介護員)は118番目、施設介護職員は、同じく117番目となっており、介護職員の給与は他の職種に比べて低い水準にあります。

なお、公益財団法人介護労働安定センターの介護労働実態調査によると、平成24年度の介護職員の所定安定内賃金(月給)は、全国平均が21万1900円、佐賀県では19万3662円となっています。

介護職員の処遇改善の為の対策については、国及び県では、介護職員の処遇改善を目的とし、平成21年度から23年度まで「介護職員処遇改善交付金事業」を行っています。また、24年度からは、その交付金事業を引き継ぐ形で介護報酬に介護職員処遇改善加算というものが設けられております。

なお、国では介護職員処遇改善加算を平成27年度から、介護報酬の基本額に組み込むこととしており、県としても、今後、国の介護報酬の改定が、きちんと介護職員の処遇改善、給与等に反映されるよう、県内事業所に対し実地指導等を通じて指導していきたいと考えています。(梅村長寿社会課長)

(6)今後の対応について

(石井)今回の介護保険制度の改正に伴い、今後、市町の責任や役割が一層大きくなると思います。地域におけるサービスの格差の拡大が懸念されるとともに、介護に従事する職員の確保が重要な課題となると思います。これらの問題について国が責任を持って対応していただく必要があると思いますが、県としても全国都道府県の皆さんと連携していくことが大変重要だと思います。

ちょうど昨年の12月に元内閣官房副長官古川貞二郎先生が素晴らしいことをおっしゃっています。

介護における施設サービスと在宅サービスの問題があるということです。「昨今この施設福祉から在宅福祉への流れが盛んに言われるが、核家族の進行や高齢単身者、老夫婦のみの世帯が増加し、在宅機能が弱くなっている今日、この流れが本当に人々の幸せにつながるだろうかと疑問を感じる」。「施設か在宅かと択一的に捉えるのではなく、地域という面で一体として捉え、福祉施設が地域の重要な社会資源として在宅福祉を支える仕組みをつくっていくことが大事ではないのか。同時に、施設自体についても入所者第一サービスは行われているかどうか。単なる預かり施設になってはいないか、よく検討をしていくことが大切である」とおっしゃっています。私も全くその通りだと思います。

こういうことをぜひ皆様の頭の中、気持ちの中に入れていただいて、現場に寄り添って、よりよい介護保険制度になれば良いなと思いますが、本部長はいかがでしょうか。

【答弁】在宅か施設かの二者択一というよりも、国全体で、地域包括ケアという考え方、在宅の施設サービスをいかに活用するか。色んな形のもので、全体的に医療と介護を連携してやっていく方向です。
一方、介護人材の確保についても、重要な課題だと思っております。今後、高齢者が増加して、介護に携わる人材が求められます。国の推計によると、2025年までにトータルで新たに100万人の介護人材が必要になるとされています。

片やその一方、今後、生産年齢人口が減っていく、若い人が減っていくことを考えると、人材の確保は非常に厳しいかと。いわば国、国家的な大きな問題だと思っています。

我々としては、ことしも全国知事会を通じて、地域包括システムの構築や、介護人材を着実に確保するための処遇改善について、国に要望、提案活動をしているところです。
今後も、高齢者が県内どこに住んでいても十分な介護サービスを受けられるように、また介護に携わる方々が安心して仕事が出来るように、引き続き国に要望を行っていきたいと思います。(船津健康福祉本部長)